2013.09.16更新
神様からの贈り物☆彡
ボクは、太田さんの家に遊びに行ってきました。
今年の5月に一緒に高尾山へ行ったきり、
約4か月振りでした。
実は、約2月前の日曜日、
ボクは、太田さんの家へ遊びに行く約束をしていました。
しかし、当日の朝7時過ぎ、
太田さんの息子さんからメールが来ました。
「ごめんさない。
母親が体調が良くないそうなので、病院へ連れて行きます。
今日、遊びに来てもらう予定だったそうですが、
延期してもらっていいですか?」
と…。
「もちろん…」と返信したところ、
お昼過ぎに、またメールをもらいました。
「めまいがひどいということで病院に行ってきました。
今は落ち着いています。
楽しみにしていたので、時間がありましたら、またお願いします。」
これまでの太田さんとの長い付き合いの中で、
初めてのことでした…。
次の日、太田さんに電話をしてみました。
「おにいちゃん、昨日は急に悪かったね…。
せっかく時間を作ってくれたのにごめんねぇ。
でも、もう元気になったからね。
また遊びに来てくれる?」
「もちろん(笑)」
ただ、太田さんの電話の声は、
あまり元気そうではありませんでした。
それからしばらくして、
ボクは、太田さんに電話をしました。
「太田さん、この前は、大変だったね。
でも、元気になって良かったよ~!!
この前行けなかったから、また遊びに行こうと思うんだけど、
来週の土日とかは大丈夫?」
「うん。大丈夫だけど、来週だとちょっとあれだから、
もうちょっと先にしてもらっていい?
9月14日の土曜日はこのあたりの町内会のお祭りだから、
そのときに来て、一緒に見に行こうか」
初めてでした。
太田さんが予定を先延ばしにしたこと…。
いつもなら、
「今週も来て、来週も来ればいいじゃない!」とか、
「来週になったら、私は生きとるか分からんよ~」とか、
言ってるはずなのに。
体調が思わしくないんだなぁ…
と思いました。
久々に会った太田さんは元気そうでした。
開口一番、いつものように、少しイジワルっぽく、
「おにいちゃん、今日のこと、よく覚えてたなぁ~。
すっかり忘れてるかと思ってたわ~(笑)」
ただ、驚いたことに…、
太田さんは、家の中でも杖をついていました。
「あっ、これ?室内用の杖なの」って…。
これまでも、高尾山に行くときには、杖を持って行ってました。
「本当は杖なんかなくても平気なんだけどね」
「なんか、年寄りみたいで恥ずかしいわぁ」
「でも、息子に怒られるの。
コケて怪我でもしたら、面倒をみるのが大変なんだぞ!って(笑)」
「私は足腰だけは強いのよ。これも、高尾山のお陰だよ」
出会った頃から、ずっと、そう自慢してたのに。
テーブルの上には、お昼ご飯が用意してありました。
いつものように、テイクアウトのお寿司です。
一緒に食べながら、色々な話をしました。
近くのドラッグストアが配達をしてくれて助かること。
買い物に行けないときは、
お惣菜屋さんから出前を取ることにしたこと。
美味しくないときは、自分で味付けをし直すこと。
あの日、めまいがして、病院へ行ったときのこと。
夜中じゅう、めまいがしながら、
朝まで誰にも連絡することができなかったこと。
夜中じゅう、怖かったけど、
朝、息子が飛んで来てくれて嬉しかったこと。
その中で、太田さんはこんなことを言ってました。
「長く生きることは大変なことだよ」って。
「長生きなんて何の自慢にもならない。
人に迷惑掛けながら生きたって、それは不幸なことだよ」って。
「この前は、掛布団と敷布団、全部で5つも布団を捨てたのよ。
役所へ電話したら、1500円分のシールを買うんだってね?簡単なことだよ」
「まだまだ捨てるものがたくさんある。着ない服もどんどん捨てるの。
そんなに服ばかりあっても、どこへ着て行くのよ」
「片づけてから死なんと、悪いから…」
「私も、あと2年…」
その後、昼寝をしました。
いつからか、食後は一緒にお昼寝をするのが習慣になりました。
夕方、太田さんは、薬を一錠飲みました。
めまいの薬だって言ってました。
ひょっとすると、ボクといる間に、
ちょっとめまいがしたのかも知れません。
ただ、その薬を飲んで、太田さんは気分が悪くなったらしく、
「おにいちゃん、悪いけど、ちょっと横になってもいい?
せっかく来てくれてるのに悪いなぁ~」
そう言いながら、30分くらい横になっていました。
その間、分からないながら、その薬をネットで調べたところ、
確かに、めまいの薬で、「耳鼻の血流を増やすことによって、
回転性のめまいを和らげる」というものでした。
そして、そこには、「副作用として、嘔吐、気分が悪くなることも…」
と書いてあったので、起きてきた太田さんにそのことを伝えてみました。
そうしたら、安心したようで、
「なんだ、やっぱり薬のせいだったんだね…。
それなら、もう大丈夫。気分も良くなったから。」
「じゃ、この薬は、何の薬か分かる?」
と、たくさんの薬をテーブルの上に…。
「え~っ、太田さん、
それは、病院の先生に聞かんとダメよ」
「私なんかがそんなことを聞いたら、
お医者さんが気を悪くするわ」
「そんなことないって!」
そこには、「めまいの薬」
「血圧を下げる薬」「血栓を防ぐ薬」
「血液中のコレステロールを減らす薬」がありました。
「おにいちゃん、飲んでも大丈夫そう??」
「えっ…?」
結局、その日のお祭りには、
出掛けることができませんでした。
帰りがけ、太田さんに聞いてみました。
ちょっと悩んだけど、やっぱり聞いてみました。
「太田さん!今度の高尾山はいつ行くかね??
暑がりの太田さんは、涼しくなってからがいいよね~(笑)」
「んん…、
最後にもう一回、行けるといいけどなぁ」
最後に?
そんな心細そうな太田さんは初めてでした…。
太田さんは、今、88歳です。
太田さんは、これまでも決して歳のことを口にしませんでした。
「おにいちゃんが聞いたら、お化けだと思ってビックリするわ」と、
絶対に教えてくれませんでした。
数年前、息子さんから聞いて驚きました。
ボクは、もう10歳くらいは若いと思っていましたから。
だから、太田さんのいう「あと2年」というのは、
そう、そういうことなんです。
太田さんは、ずっとひとりだったんだと思います。
若くしてご主人を亡くされ、女手ひとつで息子さんを育てられ、
そのひとり息子さんがご結婚されたことで、
「結婚したら他人」
「息子には息子の生活がある」
「息子にも余計な心配は掛けられない」
「誰にも迷惑を掛けずに生きていく」
「これからは、ひとりで生きていくんだ」って。
すごく心細かっただろうなって思う。
「おにいちゃん、
よく、“死ぬのが怖い”とかって言うでしょう?
でもね、私なんかこの歳になると、死ぬことなんか全然怖くないのよ。
知らない間に、サバっと死ねたらそれは幸せなこと。
そんなことよりも、動けなくなって誰かのお世話になったりしたら、
そんな惨めなことはないのよ。
私は、そのことの方がよっぽど怖い」
今回も、ボクは、太田さんからこう言ってもらいました。
「おにいちゃん、
おにいちゃんはどうしてそんなにいい子なの?
忙しいのに、こんなババアのところに遊びに来てくれて。
高尾山にももう何回も一緒に行ってくれて。
私はね、おにいちゃんのことを神様からの贈り物だと思ってるの。
だから、私は、おにいちゃんのお母さんに、ありがとうって言いたい。
こんないい子を育ててくれてありがとうって。
私みたいおばあさんに会わせてくれてありがとうって。
おにいちゃんのお母さんは、とても寂しいと思うよ。
こんないい息子と離れ離れで。
おにいちゃんは、大切に育てられたんだなぁ
じゃないと、こんないい子にはならんよ。
おにいちゃんみたいないい子はこの世の中にはおらん。
私は、人生の終わりに、おにいちゃんみたいないい人に出会えて、
世界一の幸せ者だと思ってる。
感謝せんと罰があたる。
この写真、お母さんに送ってあげて、
こんなババアが、大切な息子のお世話になって悪いなぁって伝えて欲しい」
太田さん、あなたは凄い。
あなたみたいな人こそいない。
あなたに出会えたボクこそが幸せ者。
だから、ありがとうはボクの方。
ありがとう。
ありがとう。
本当に感謝しています。
だからお願い、
ずっと元気でいて欲しいです。
神様、
お願いします。
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