遺言書には法律に基づいた要件が必要です。もしその要件を満たさないと無効になってしまいます。 また、内容についても、人物の特定・財産の特定等、第三者でも分かるように記載する必要があります。 当事務所にご相談いただければ、法律と現実の両方を踏まえたご提案をさせていただきます。
夫の死亡により相続が開始したものの、子供がいなかったため、亡夫の兄弟姉妹が相続人になると聞きました。ただ、夫の親戚とはほとんど付き合いがなかったため、その兄弟姉妹が何人いるのか、また、どこに住んでいるのかさえ分かりません。夫は生前「自分が死んだら、残産はお前にやる」と言っていました。この場合、亡夫名義の不動産・銀行口座はどうすれば私の名義になるのでしょうか?
例え「自分が死んだら、残産はお前にやる」と言ってくれていたとしても、遺言書がない場合、残念ながら、法定相続人全員での話合い(遺産分割協議)が必要になります。つまり、亡夫さん名義の不動産・銀行口座をあなたの名義にするためには、法定相続人全員の了解が必要になるため、法定相続人の住所が分からない場合は、戸籍謄本を追って調査しなければなりません。人数が多いと非常に手間と時間が掛かりますが、ひとつずつ調べていくしかなく、その上で、相続人全員の了解を取る必要があります。
相続人の調査をしたところ全員で19名の相続人が判明しました。また、中には連絡が取れない人、入院中の方もいたりして、最終的に遺産分割協議が整うまで2年以上掛かりました。
「遺言書」があれば…。このケースでもし夫が遺言書を作成していたら、亡夫の兄弟姉妹との遺産分割協議は必要ありませんでした。また、兄弟姉妹には「遺留分」もありませんので、争うこともなくスムーズな相続手続きが行えていたことでしょう。
祖父が遺言書を作成している途中で亡くなってしまいました。書きかけの遺言書は、どこまで有効なのでしょうか。また、そのこともあり、父が遺言書の作成について「自筆の遺言書」と「公正証書の遺言書」で迷っています。どちらがよいのでしょうか?
遺言書の要件すべてを満たさない限り、有効な遺言書としての効力は持ちません。その場合は、法定相続人全員で、遺産分割協議を進めていくしかないでしょう。 ただし、例え書きかけであっても、その書きかけの部分が遺言書としての要件を満たしているのであれば、その遺言書は有効になります。 また、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」については、以下のような違いがあります。
書きかけの遺言書には、名前の記載がなかったため、残念ながら遺言書としては無効でした。ですが、遺言書としてではなく、あくまでメモとして故人の思いを示すものにはなりました。「自筆の遺言書」と「公正証書の遺言書」については、より確実な公正証書遺言をお勧めしました。遺言書の原案は、私もお手伝いしながら進め、一緒に公証役場へ行き「公正証書遺言」を作成しました。
公正証書遺言の場合、公証人がご自宅や入院先へ出張して作成することも可能です。内容の修正はいつでもできますので、早い段階で「現在のお考え」を遺言として形にしておいてはいかがでしょうか。万が一のとき、ご遺族の手間が大きく軽減されます。
Q
遺言書に「100万円を譲る」と書いた以上、ずっと100万円を残しておかなくてはいけないのでしょうか?
A
ご心配はもっともです。遺言書の内容はいつでも変更できますので、定期的に金額だけ書き直すことも可能です。あるいは、金額の明記を避け、特定の口座を指定する方法が考えられます。
法律用語を調べるのが大変で、遺言書を書く気にならないのですが?
無理に法律用語を使う必要はありません。普段使っている言葉で大丈夫です。ただし、あいまいな表現は避けてください。例えば「私が死んだら“家”は妻に相続させたい」と遺言書に書いた場合、この内容では“土地”は誰に相続させたいのかが分かりません。
いざ私が死んだ時、遺言書の通りになるのかが心配です。
遺言書には、「遺言執行者」という、まさに「遺言を執行する者」を定めることができます。遺言執行者は、遺言書に書かれた内容を実現するために必要な手続き(相続人への連絡・相続財産の調査・不動産や預貯金などの名義変更等)を行う人のことです。この遺言執行者には、相続人はもちろん、弁護士・司法書士等の専門家がなることが多いです。